僕はいつもセミナーで正常(経常)運転資金について話をしています。
でも受講されている方の反応は「すげー!」ではなく、
「ふーんそうなんだ」という感じ。
詳細をセミナーでお伝えできればいいのですが、
時間が足りなく端折ってしまうことが多く申し訳ございません。
(講義中何かが僕に降りてきて違う話をしてしまうんですw)
今回はとても大切なことですので記事にしておきます。
そもそも正常運転資金の定義は、
売上債権(売掛金、売上手形)+棚卸資産(商品、仕掛品)-仕入債務(買掛金、支払手形)
講義では、
「運転資金は短期で融資を受けるといいですよー。」
とは言ってますが、そもそも運転資金ってなに?という方や、
銀行から長期(証書貸付)でしか借りていない方には理解しにくいですよね。
物やサービスを現金で貰ったり支払う商売には運転資金という考えはないです。
商売は掛け(ツケ)でおこなわれるケースがほとんどですよね。
物を売って売上を計上して、月末締めで請求書を出して、
翌月末とかに現金が振り込まれるじゃないですか。
物を仕入れた時も同じ考え方だと思います。
このサイト(猶予期間)が毎月一定だと入金と支払がピタッと一致しますね。
だから運転資金はいらない。
ですが物を仕入れてお金を払って、組立や工事に1か月かかってしまった。
翌月以降に引き渡し後に売上を計上。
その月の末に請求書を出してその翌月に振込という流れだとどうでしょうか?
このケースだと常に1か月分の資金が不足しますよね。
これを運転資金と言います。
先ほどの運転資金の定義を数字で表すと、
売上債権50+棚卸資産50-支払債務50=正常運転資金50
この運転資金を手元現金で回せないため、銀行から100借り入れたとします。
毎年10ずつ返していくのですが借入残が50を切ってしまうと運転資金がまかなえません。
どうするのか?
追加でもう50借りても3年後にまた資金ショートします
ですので、50をいったん返して100借り直します。
「御社にはこれだけ枠がありますよ!」
と銀行担当者がよく言うアレです。
でもこれでは資金繰りが安定しない。。。
運転資金50という数字は当社が事業を続けていくうえで絶対必要なお金。
元本返済のない疑似資本(会社のお金とみなしてもいいよね)と考えてもらいます。
元本返済のない形で金利だけ支払うので50は借り続けてもいいですよね。
だって事業をやめた時にはこの運転資金50は翌月に得意先から支払われるので、
いつでも銀行に返済できますもん。
これを短期継続融資と言いますが、短期というよりもはや無期限。
(正確には1年や半年後の期日に一括返済し、すぐに借り直すのですが、実務上では期日到来時に期間を延長します)
ということで正常(経常、所要)運転資金は短期融資が良いと言われています。
ちなみに売上債権のサイトを短くし、支払債務のサイトを長くすると正常運転資金の額は少なくなりますがお金が眠っている期間が短くなるので資金繰りが良くなります。
運転資金分の貸出利息も減りますので一石二鳥ですね。
ついでにセミナーで話していることをもう一つ
「売上が増えると資金繰りが悪くなる」
これはもう皆さんはお分かりですね。
全ての科目を倍にすると
売上債権100+棚卸資産100-仕入債務100=運転資金100
50用意していた運転資金も倍必要になります。
あれ?じゃあ現金損益(営業キャッシュフロー)は、
当期利益+減価償却費-元本返済-保険の資産計上分-正常運転資金増加額
という考え方でもいいかもしれませんね。
「よっしゃ当社も早速銀行に相談しに行こう!」
となり、キャッシュフローが良くなるといいのですが。
この短期継続融資の考え方はすべての銀行に通るものではありません。
運転資金は長期の融資しか対応しませんという銀行も存在します。
(会社の経営状況にもよりますからね)
2016年に発刊された「捨てられる銀行」で橋本卓典さんが詳細を記しています。
二極化する地域金融、その未来
「課題解決型銀行」と「金融排除型銀行」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsip/14/1/14_1_14/_pdf/-char/ja
「当行は短期継続融資をやっていません」
「短期継続融資をだすと企業がダメになる」
長期で貸したら貸しっぱなし、返済が終る頃まで顔を見せない銀行と毎年関係性を持ちながら会社の状況を把握している銀行。
金利や規模だけで銀行とお付き合いするのか、リレーションシップバンキングとして企業の発展に支援してくれる銀行とお付き合いするのか。
当然、僕は後者の銀行をおすすめしております。
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