前回に続き、M&Aの話をもう少し。
とある地方都市で飲食店を
100年に渡って経営していた
老舗企業のM&A事例をご紹介します。
その飲食店は4代続く
地域密着型の「大衆食堂」
牛の腸を串刺しにして
甘く煮込んだ『関東煮』と
牛肉やゴボウ、ネギなどを
甘辛く煮た『肉皿』という
2つの看板メニューが
長年市民から愛されていました。
右肩上がりに成長するような経営ではないので
借金こそないものの現状維持が精一杯。
お客様のためにとコロナ禍を経ても
頑張ってきましたが
4代目社長の健康問題もあり
身内や親族にも継ぐ人はおらず
廃業することを決断されたそうです。
しかし、これだけ続いた老舗企業なので
周りが放っておきません。
お店が閉店を考えていると聞きつけた
地元の企業の何社かが、
「ぜひ我が社で引き継ぎたい」と
申し出たそうです。
こんな嬉しい話はありませんよね。
各社吟味した結果、最終的に
元々お付き合いのあった食品加工会社に
事業を譲渡することになりました。
譲渡したものは、屋号と
看板商品のメニュー・レシピです。
お店は残さず、味を残したということです。
お店の看板商品で「市民のソウルフード」
といわれていた関東煮と肉皿の製造販売を
展開することになりました。
ハードとしてのお店はなくなりましたが
屋号を引き継いだので
お店の名前で商品展開し、
テナント店舗とインターネット市場には
きちんと存在感を放っています。
このM&Aで特筆すべきは、
食品加工会社の従業員の情熱です。
なんとかオリジナルの味を忠実に再現しようと
何度も味を確かめ、納得のいくまで
試作を繰り返したそうです。
このように、会社の価値を
「数値」だけを判断せず
会社の背後にある歴史、想い、
ストーリーなどに敬意を払う。
一心にそれらを引き継ぎたいという想いが
買収の理由であり原動力でもある……
……このようなM&Aもあるということですね。
ここまでお読みいただいて
ありがとうございます。
以上、父親の生家の話でした。